就職することが決まった私は、病院に足を踏み入れた。
「医療法人●×病院」という看板が目に入り、大きくため息をついた。長年の夢だった看護師という仕事が今から始まる。
初日の私の仕事は先輩看護師の助手だった。言われたことをこなすだけでやっとだ。
看護実習でやったことが大半だったが、あのころは学生だったが今は使えない看護師という立場になってしまう。
ただ、先輩の後をついて行くだけではただの足手まといだ。そんなのは御免だ。
「採血、してきて」
初めて任された自分の仕事に私は笑顔でうなづいた。
「はい」
絶対、何が何でも失敗できない。
だが、世の中はそんなに甘くない。緊張した表情でぶすっと刺した私の目の前で患者さんである女の子が目をむき、ぐったりと倒れこんだ。
「え……」
「何やってるの?血管から外れてる!!」
後ろから叱責され、私は思わず注射器を引きぬいた。その瞬間勢いよく血があふれ出る。
「あ……なんで……」
真っ青になった私の前でバタバタとかける音が聞こえる。
てきぱきと処理する先輩看護師の姿を呆然と見つめた。自分がした失敗がどれだけ患者さんを傷つけるものだったのか今の私には理解できない。
「大丈夫よ」
ポンポンと頭を叩く優しい音が聞こえた。
「先輩……?」
「あんた、気負い過ぎ」
きっぱりと言われた言葉を私は一生忘れない。二度と同じ失敗はしない。
新人時代の失敗は、トラウマに。
二度と失敗したくない惨劇なので、採血するたびに尋常じゃない汗をかきます。
看護師長と話す機会があったので、緊張が少ない病棟勤務に変更できないか?
聞いてみましたが、病棟のほうがもっと過酷で、患者さまからNO!をもらわないよう
外来で練習しなさとアドバイスを貰いました。
今が正念場と思いますが、転職はまだ早いですよね。