現在、全国で正看護師の資格を持つ人はおよそ100万人以上いると言われています。さらにそこに、準看護師を入れると150万人近くが看護の仕事をしていることになります。ちなみに、警察官は全国で約25万人ほどいますが、それと比べると「意外とたくさんいる」という印象を持ちます。

しかし、現状では多くの病院で看護師不足が問題になっています。150万人もいるのになぜ?と思われるかもしれませんが、看護師の資格は一度取ってしまえば更新などは必要のない資格なのでこの数字の中にはすでに現役を引退した方や、資格を持っているのに看護師としては働いていない方も含んでいます。それでも、現実にはかなり数の看護師がいるわけですが、その人手不足の主な原因は看護職の離職率の高さにあります。看護師の仕事は肉体的・精神的に相当大変なので、一度仕事を始めてもすぐに辞めてしまうケースが後を絶ちません。

さて、実際に日本看護協会が調査した看護師の離職率は次のようになっています。

<主な都道府県での看護師の離職率 (2012年度)>

・全国平均
常勤看護師 11.0%
新人看護師 7.9%

・東京都
常勤看護師 14.2%
新人看護師 8.4%

・神奈川県
常勤看護師 14.1%
新人看護師 8.9%

・大阪府
常勤看護師 13.9%
新人看護師 9.6%

・愛知県
常勤看護師 12.2%
新人看護師 7.6%

(日本看護協会公開のデータより抜粋)

一般的に離職率が高いといわれている飲食業などのサービス関連産業では、離職率が20%以上という調査結果もあることから、看護師の離職率がそこまで目立って高いというほどには感じません。しかし、実際の現場の声として「春に入った新人看護師が半年で半分以上辞めてしまった」「人数に余裕があったのは最初のうちだけで、すぐに人が足りない状態に戻る」と、人手不足を嘆く声が多く聞こえてきます。

ところで、この離職率とは、ある一年間においての退職者数を元に計算されています。病院として離職率を下げるための対策を講じている所もありますが、例えば退職希望者を引き止めて退職時期を延期したり、退職者を休職扱いにするといった方法で表向きの数字を調整している所もあるといいます。

また、新人看護師の離職率についても、背景にいわゆる「お礼奉公」という制度があります。これは、病院が看護学生に奨学金を出す制度ですが、卒業後に一定年数自分の所で働くことを条件にしています。この制度を利用している学生も多くいますが、その規定年数を満たさずに退職した場合は、その奨学金を一括返済しなくてはなりません。つまり、この制度を利用した学生はどんなに苦しくても我慢してその期間は働かざるを得ないわけです。この制度も一見新人看護師の離職率を下げているようですが現実にはいろいろと問題も多いようです。

このように、看護師の離職率については表向きの数字だけでは分からない部分も多く、実際の現場の声とも合わせて考える必要がありそうです。